鬼姫伝説 Ⅱ
「・・・いったい、どうしたのだ」
「どうして・・・?どうして呼んでくださらないの?・・・千代と、前みたいに、千代と呼んでください」
「ち、千代・・・?」
千菜の口から発せられたその名に、戸惑う。
琉鬼も驚き立ち上がると、驚愕の顔で二人を見た。
「千代・・・だと・・・?」
「こうして・・・、ずっと鬼羅に触れたかった。鬼羅と、こうして目を合わせて名を呼んでほしかったのです」
「本当に・・・、千代なのか?」
「ええ・・・ええ・・・。ああ、、夢のよう。こうしてまた、鬼羅と触れ合えるなんて」
うっとりとしおらしく鬼羅に身を寄せる。
千菜が千代の生まれ変わりというのは、真実であったのか。
それを目の当たりにして、信じるしかなかった。
「鬼羅・・・」
「ああ・・・」
「ずっと、ずっと、お慕いしておりました」
「俺も・・・、千代を忘れた日などなかった」
鬼羅も、その千代の背中に手を回し強く抱きしめた。
ずっと想っていた。
自分を守って死んだ千代を。
忘れた日なんて、なかったのだ。