鬼姫伝説 Ⅱ
「鬼羅・・・っ」
はじけた声に顔をあげれば、笑顔を浮かべた千菜・・・ではなく千代の姿。
鬼羅は切なく微笑むと千代に歩み寄った。
「鬼羅、今日も抱きしめてくれますか?」
「ああ・・・」
毎日のように、互いの存在を確かめるように抱きしめる。
そして確信する、互いがそこにいるのだと。
「少しの時間でも離れたくはないのに・・・」
「千代・・・」
鬼羅は一度強く千代を抱きしめる。
覚悟を決めるように。
この時間を終わらせる覚悟を。
「千代。・・・話したいことがある」
「なあに?」
穏やかに笑う千代は、これから言われる言葉をまだ知らない。
きっと残酷であろうその言葉を、言う時を鬼羅はためらいながらも千代の身体を離した。