鬼姫伝説 Ⅱ



連れてこられた場所。
ゴザのようなものの上に縛り上げられ座らされていたのは、不気味な男。
白髪の目立つ不潔そうな容姿のその男は、項垂れるように前かがみに蹲っていた。




「久しぶりだな。呪術師」



鬼羅が忌々しそうに呟く。
会ったことがあるんだろう、それはきっと千代さんとの時。
こいつが、千代さんにひどい呪いをかけたんだ。
鬼羅にとっても、もう一人の仇ともいえる人かもしれない。




「貴様が昔、千代にかけた呪い。それを解け」

「・・・あの娘は死んだでしょう。呪いをといたところで生き返りはしない」

「わかっている。この娘にも、同じ呪いがかけられている。お前にならそれを解くことができるだろう」





鬼羅がちらりと私を見る。
私は少し前に出て、男の視線に入る場所に立った。
男はちらりと視線をあげ私を見入る。



「そのような義理が、あると?」

「貴様の命は俺が握っている。断るというなら今すぐここで殺す」

「脅す気か?」

「呪いをとくためなら、何でもする。貴様、牢に入れられていたそうだな。時光は私利私欲のため、貴様を閉じ込めていた、違うか?逃げ出した今、時光は貴様を死に物狂いで探すだろう。あの場所へ、戻りたいか?なんなら、俺が貴様をあいつから護ってやってもいい」




鬼羅は淡々と話す。
時光から男を護る。
そんな事、絶対したくないだろうに。
私のために、憎しみさえも抑えて・・・。



< 170 / 198 >

この作品をシェア

pagetop