鬼姫伝説 Ⅱ
「鬼羅、私の名前を呼んで」
ギュッとくしを握りしめる。
まっすぐ鬼羅を見る。
「千菜」
「もっと」
「・・・千菜」
「もっと」
たりない。
私の名を。
私だけの名を。
ああ、いつの間にこんなによくばりになってしまったんだろう。
「いくらでも呼んでやる。だから、ここにいろ」
抱きしめられた身体。
耳元で、私の名前がささやかれる。
ぞくっと震わせた背中。
鬼羅の腕が優しく抱いた。
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