鬼姫伝説 Ⅱ
私は、元の世界に戻ってきた。
何か月も向こうに行っていたはずなのに、私が戻ってきたのは私が向こうに行ったその日。
次の日、おばあちゃんのお見舞いに行ったら、入院したのは昨日だと言われた。
まるで、あっちでの出来事が夢だったかのようで。
目を覚ましたのは、私が泣いてすがったあの神社。
でも、服装は制服ではなく、鬼羅がくれた着物だった。
そして、鬼羅がくれたくし。
それだけは、私が向こうに行っていた確かな証だった。
「・・・鬼羅」
名を呼べばこみ上げてくる涙。
もっと呼べばよかった。
最後の声届いただろうか。
私の声をずっと覚えていると言った。
私は、それが嫌で名を呼ぶ事も好きだと言うこともできなかった。
こんな事なら、言っておけばよかった。
「鬼羅・・・、鬼羅・・・、好きよ・・・」
こんなにも想いは溢れるのに。