鬼姫伝説 Ⅱ



「私の居場所なんて、どこにもない。私なんて、誰も求めてなんてない」

「俺は・・・」

「私は千代さんじゃない!」





私は、ここにいるのに。
私は・・・。




誰か、気づいて。
私はここにいるよ。





「それなのに・・・なんで、あんたが千代さんを思ってくれた子の着物を大切に想うの!?なんで、失いたくないって・・・想うのよ!」




こんな着物。
捨ててしまえたらいいのに。

それなのに、なぜ。




「おい、・・・落ち着け」

「いや!放して!」



鬼羅が私の腕を掴み、落ち着かせようとする。
それでも私はもがきその腕から逃れようとする。


グラッと視界が揺れ、私は足から崩れるように倒れこんだ。
それを、鬼羅が抱き抱える。



「千菜!」




初めて、名前を呼ばれた気がした―――――・・・・。





< 63 / 198 >

この作品をシェア

pagetop