Ri.Night Ⅱ


今、見ているこの光景を嘘だと思いたい。

あたしは悪い夢を見ているんだと。


怖い夢を見ているんだと、そう思いたい。


だけど、神様は無情にもそうは思わせてくれなかった。




「何で獅鷹がこんなとこに居る訳?」


沈黙を打ち破ったのは総長の十夜ではなく後ろに居た彼方で。


「そんなもの俺等の勝手だろう?」


それに対して応えたのは獅鷹の総長である貴兄。


「ハッ。まぁ、そうだな。けど、“俺等の縄張り”で悪さするんじゃねぇぞ」

「………」

「俺等は“あの事”忘れた訳じゃねぇからな」


あの、事……?


煌の口から放たれたその言葉の意味が分からなくて眉を潜める。


あの事って何?

獅鷹と鳳皇の間に何かあったの?



「……テメェ。黙って聞いてりゃ何抜かしてんだよ!“あの事忘れた訳じゃねぇ”?それはこっちの台詞だ!!」


貴兄の背後に居た嵐ちゃんが、煌に向かって牙を剥く。


その凄まじい咆哮に辺りは緊迫した空気に包まれていて。


そこだけお祭りムードが払拭されたかのように静まり返っていた。


だけど、それはこの場だけであって、すぐ近くでは通常通りお祭り騒ぎで賑わっている。



それでも、ハッキリと聞こえた両者の声。

普段の彼等からは決して直接聞く事のない、怒気を孕んだ声が確かに聞こえた。




「……っ、」


やめて。やめてよ。

そんな声出さないで。

そんなコワイ顔しないでよ。


そんな“敵”を見る様な目で見ないで。



獅鷹はあたしの兄弟で仲間で、鳳皇はあたしの友達で仲間なの。


両方大事な人達なんだから。


……だから、そんな目で見ないで。
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