Ri.Night Ⅱ
「───行くぞ」
「……っ」
電話口から聞こえてきた十夜の声にビクンと身体が跳ねた。
だって、その声はいつも聞いてる声だったから。
怒りも何もない、いつも通りの十夜の声。
その声に、ホッと口から息が洩れて、直ぐ傍にあった木にそっと凭れ掛かる。
視線の先には貴兄の傍を通り過ぎようとしている十夜がいて。
一度も貴兄と目を合わせないまま通り過ぎてしまった。
十夜が獅鷹を通り過ぎ、後ろを歩いていた煌達がちょうど貴兄の真横に来た時、煌だけが立ち止まって貴兄を睨みつけた。
「十夜は許しても俺等は許さねぇから」
それだけ言って再び歩き出した煌に、あたしは俯いて胸元をギュッと強く握り締めた。
“十夜は許しても俺等は許さねぇから”
その言葉がまるで刃となってあたしの胸を深く突き刺す。
……“あの事”って、何?
十夜は許してもって………まさか、十夜のあの“傷”が関係してるの?
「……っぅ、」
もう、何が何だか分からないよ……。
今も尚、震え続けている手をスマホごと強く握りしめ、その場から動く事も出来ないままぼんやりと皆の行動を眺めていた。