Ri.Night Ⅱ



「……オイ」



やっと離れる。


そう思っていたのに、電話口から聞こえたのは貴兄の低い声で。


総長の時にしか発しないその声色に、あたしの心臓(ココロ)は有り得ないぐらい反応した。


自分が呼び止められた訳でもないのに、胸の高鳴りが異常なまでに速い。



「………」


十夜は貴兄の呼び掛けに立ち止まりはしたけど振り返りはせず。


背を向けたままただ立ち尽くしているだけ。



十夜は今、何を考えているの?



それを知りたいけど、いざ答えを聞くとなると怖い。







「──お前の目的はなんだ?」



十夜と同じく背を向けたままそう問い掛けた貴兄に眉根が引き寄る。



お前の目的?


貴兄は一体何の事を言ってるの?




「………」



何も答えない十夜に次第にあたしの中で疑問が浮かんだ。



もしかして、貴兄の言う通り本当に何か目的があるの?




「お前、俺等が喧嘩してる時、陰で見てるよな?」



………え?陰で見てた?



「何を企んでる?」



貴兄のその言葉はまるで凶器のようだった。


あたしのすっからかんな脳ミソに容赦なく衝撃を与え、堕とす。



衝撃を受けた脳の中で浮かんだのは、“あの時”の煌の言葉。




“十夜は獅鷹の所へ行ってる”



あれはやっぱり事実だったんだ。


本当に十夜は獅鷹の元へ行っていた。





「……何も」



十夜はそれだけ言って再び歩き出す。




“何も”



それは、何も企んでないってこと……?



じゃあ、なんで獅鷹を見てたの?

なんで、獅鷹の所へ行ってたの?



ねぇ、なんで……?


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