Ri.Night Ⅱ
哀しい。苦しい。
……辛い。
色んな感情が一気に押し寄せて、あたしの心を侵食していく。
『凛音、お前の浴衣姿見たかったけど我慢するな』
「……うん」
『俺等帰るからお前も帰れよ』
「……分かった」
『気を付けて帰れよ?』
「うん」
『じゃあな』
「うん、バイバイ……」
貴兄はあたの様子に気付かないまま電話を切った。
耳元にあてていたスマホを耳から離し、そのままだらんと下へ落下させる。
視界に映るのは、獅鷹幹部の後ろ姿。
貴兄達が去って行った事によって取り囲んでいた野次馬達は散っていき、元のお祭りも姿へと戻っていく。
あたしだけ。
あたしがそのままの状態で突っ立っていた。
涙はまだ止まらない。
過ぎ行く人に怪訝な顔で見られても、あたしの涙は止まる事はなかった。
……あぁ、そうだ。十夜に電話しなきゃ。
だけど、会いたくない。
ううん、違う。
会えない。
十夜は……貴兄に会ってどう思った?
憎いと思った?
隣県に会いに行くぐらい憎いと思ってるの?
「……っぅ」
……何で、
何で貴兄なの?
他のチームじゃなくて何で獅鷹なの……!?
「……ぁ」
握っていたスマホが突然鳴り出して、治まったばかりの動悸が再び激しく打ち始める。
おもむろに視線を落せば、画面に表示されているのは十夜の名前で。
正直、出たくないと思った。
でも、皆心配してくれてるだろうから。
「……はい」
震える声で電話に出た。