Ri.Night Ⅱ
「凛音ちゃん」
「ん?」
呼び掛けられて振り返れば、そこに居たのは冬吾くんで。
「俺等がさっき言った事は本当だから。皆凛音ちゃんの事が大好きなんだ」
「……冬吾くん」
「だから頑張ってね。俺等、凛音ちゃんが“鳳凰妃”になれるの待ってるから」
「……うん」
応援してくれる冬吾くんに、あたしは「うん」しか言えなかった。
だって、あたしは“鳳凰妃”にはなれないから。
どんなに頑張っても十夜の“彼女”にはなれない。
それが分かっているのに、“頑張る”なんて言えないよ。
「十夜の彼女……」
十夜を想うだけで奥底にしまい込んだ感情が一気に溢れ出して。
蓋をしても奥底にしまい込んでも、その感情は抑まりきらずに次から次へと溢れ出してくる。
……あたしは、十夜の彼女になれない。
溢れ出す哀しみと果てしない罪悪感。
それが大波となってあたしの心を襲う。
この大波がおさまるのは十夜達に打ち明けた時だけ。
けど、もし打ち明けたとしても、また違う大波があたしを襲うだろう。
今までの大波よりも更に大きい、“別れ”という名の大きな波が。