Ri.Night Ⅱ


「離して!!」


「だれが離すかよ」


「……っ」



ハッと小馬鹿にするように鼻で笑った赤髪の男を見て、あたしの中でプツンと“何か”が切れた気がした。



「……しつこい。離せって言ってんでしょうがっ!!」



そう叫んだ時にはもう空を切っていた右足。


ドゴッと鈍い音が辺りに響いたかと思うと、男は前のめりになって両膝をついた。



自分でも分かるほど綺麗に決まった横蹴りに「よっしゃぁ!」とガッツポーズする。


「……ん?」


けど、すぐにオカシイ事に気が付き、ガッツポーズしたまま停止。



……あれ?なんかデジャヴ。



何処かで見たことがあるこの光景に首を傾げるあたし。


そうだ。確かこれって十夜達と初めて会った時と同じような……。



って事はもしかして。



「もしもーし」



ある部分を押さえて蹲っている黒烏の総長さんにそろっと話しかけてみるけど、返事は返ってこなくて。


「え」


たらり、冷や汗が流れ落ちる。



……あは。


もしかしてあたし、またやっちゃった?



小刻みに震えている男を見て、流石にヤバいと思ったあたしは、違う意味で助けを求める為、振り返った。


すると、さっきまであんなに騒がしかった広場がシーンと静まり返り、みんな赤髪の男を穴が空くほど凝視していた。


その、何とも言えない空気をぶち破ってくれたのはこの男。



「……ブ八ッ!ギャハハハハ!!アイツまた股間蹴りやがったぜ!?」



あたしを指差しながら下品な笑いを公園内に木霊させる煌。



「ほぉー。あれがりっちゃんの伝家の宝刀か」


そして、その隣では「いいモノを見た」と、彼方が満足げに頷いていた。



ちょっと!頷いてないでこの状況どうにかしてよ!
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