Ri.Night Ⅱ
「行くぞ」
あたしと違ってピンピンしている煌と彼方と壱さんは、停車してすぐに車を降りて行った。
……うっぷ。あの運転でよく動けるよね。ある意味感心するよ。
そんな事を思っていると。
「――心臓、止まるかと思った」
まだあたしを抱き締めたままの十夜が、あたしの首筋に顔を埋めてぼそり、そう呟いた。
心底安心したように呟いた十夜にプッと心の中で笑う。
なに。十夜も壱さんの運転怖かったの?
可愛い過ぎる十夜の言葉に「あたしも心臓止まるかと思ったよ。こんなに怖いとは思わなかった」と賛同。
すると十夜はそっとあたしを離して、
「阿呆。そういう意味じゃねぇよ」
そう言った後、頬っぺたをむぎゅっと引っ張ってきた。
「十夜、痛い!」
力は抜いてると言えども、地味に痛い。
っていうかなんで抓られてるか分かんないんですけど!!
「まだ何も言ってねぇ。だから、居なくなるな」
「……へ?」
何も言ってない?何を?
相変わらず主語が抜けている十夜の言葉に脳内はハテナだらけ。
「意味分かんないんですけど」
そう不満げに零すと、十夜は頬から手を離し、フッと笑ってあたしの頭の上に手を置いた。
「近い内に分かる」
「……そのセリフ、今日何回目ですか」
暴走に行く前からその台詞ばっかりなんですけど。いい加減聞き飽きた。
「……そんなに知りてぇなら今日教えてやるよ」
「え、ホント!?じゃあ今教えて!」
「今は時間ねぇ。帰って来たら教えてやる」