Ri.Night Ⅱ


そっと両腕を広げて、すぐ傍に居る十夜に摺り寄って行く。


すると。


「……っ、勘弁しろよ……」


頭上から、困ったような、焦っているような、何とも言えない声が落ちてきて。


次の瞬間、ふわっと身体が宙に浮いた。


引き寄せるように抱え直した十夜に、あぁ、やっぱりこれは夢なんだと思った。


だって、十夜はこんな事しないから。











──ガチャ。



「凛音、下ろすぞ」


ふわり、背中に柔らかな感触がして、身体が小さく上下に揺れた。


「凛音」


……十夜?


あたしを呼ぶ声に、無くなりかけていた意識が引き戻される。


薄っすらと目を開けると、半分にも満たない視界に飛び込んできたのは十夜の穏やかな笑み。


「十夜……」


鼻先を掠める十夜の香りに、浮上した意識が再び落ちていく。


そんなあたしの耳に届いたのは、離れていこうとする十夜の声。



「……凛音、おやすみ」


「……っ、やだ……っ」


その言葉に引き戻されて、掴んでいた服を強く引き寄せた。



「……っ、凛音、勘弁しろって言っただろ」



再び揺れるベッド。

それと同時に左手を掴まれて、十夜の指があたしの指に絡まる。


「凛音………」


耳元でリアルに感じる囁きは、夢とは思えないぐらい甘くて。


これが夢じゃなかったら良かったのにと、指を絡ませながら思った。

< 236 / 348 >

この作品をシェア

pagetop