Ri.Night Ⅱ
そっと両腕を広げて、すぐ傍に居る十夜に摺り寄って行く。
すると。
「……っ、勘弁しろよ……」
頭上から、困ったような、焦っているような、何とも言えない声が落ちてきて。
次の瞬間、ふわっと身体が宙に浮いた。
引き寄せるように抱え直した十夜に、あぁ、やっぱりこれは夢なんだと思った。
だって、十夜はこんな事しないから。
──ガチャ。
「凛音、下ろすぞ」
ふわり、背中に柔らかな感触がして、身体が小さく上下に揺れた。
「凛音」
……十夜?
あたしを呼ぶ声に、無くなりかけていた意識が引き戻される。
薄っすらと目を開けると、半分にも満たない視界に飛び込んできたのは十夜の穏やかな笑み。
「十夜……」
鼻先を掠める十夜の香りに、浮上した意識が再び落ちていく。
そんなあたしの耳に届いたのは、離れていこうとする十夜の声。
「……凛音、おやすみ」
「……っ、やだ……っ」
その言葉に引き戻されて、掴んでいた服を強く引き寄せた。
「……っ、凛音、勘弁しろって言っただろ」
再び揺れるベッド。
それと同時に左手を掴まれて、十夜の指があたしの指に絡まる。
「凛音………」
耳元でリアルに感じる囁きは、夢とは思えないぐらい甘くて。
これが夢じゃなかったら良かったのにと、指を絡ませながら思った。