Ri.Night Ⅱ
「膝枕、して欲しいなーって」
“膝枕券”をヒラヒラさせて、十夜に見える様にズイッと目の前へ持っていく。
「……近い」
「失礼」
近付けすぎた。
“膝枕券”を少しだけ手前に引いて、ホラッと分かりやすく文字を指差す。
「俺がするのか?」
「うん。あたしがご褒美で貰ったんだもん」
「…………」
煙草を咥えたまま黙り込む十夜さんはどうやらかなり考えているご様子。
やっぱり駄目だよね。
良いもん。駄目だって分かってたし。
“膝枕券”を引っ込めて、「はぁ……」と溜め息をつく。
……ん?
心の中で盛大に溜め息を吐き出した時、視界の端に居た十夜がゆらり、動いた。
顔を上げればすぐ目の前に十夜が立っていて。何故かあたしを見下ろしている。
「十夜?」
どうしたんだろう?
「膝枕、するんだろ」
「えっ!?」
隣に腰を降ろしながらそう言った十夜に目を見開いて驚く。
だって、本当にしてくれるとは思ってなかったから。
え?え?え?ホントにしてくれるの?
自分から頼んだのに、いざOKを出されるとうろたえるあたしって……。
チラリ、横目で十夜の様子を窺う。
「何だよ」
「いや、ホントにしてくれるのかなって」
「お前が言ったんだろうが」
「うん、まぁそうなんだけど……」
まさかしてくれるとは思わなかったからさ。
若干ムッとした表情の十夜に、エヘッと苦笑いする。
「いいから早く来いよ」
「は!?え、ちょ……っ!」
心の準備も出来ないまま頭を引き寄せられ、横に倒れていく上半身。
勿論、倒れたのは十夜の膝の上で。
ちょっと……これはヤバいんですけど。
今の自分の体勢を想像すると、恥ずかしさで顔を覆いたくなった。