Ri.Night Ⅱ
「ん?」
一人身悶えていると、背後から頭をガシッと鷲掴みされて、グイグイ引っ張られる。
「十夜、重いっ!っていうか痛い!」
起きて早々何すんの!?
「帰るぞ」
「……へ?」
帰る?
「え、帰っていいの?皆は?」
「遅くなるってメール来た」
あ、ホントだ。
差し出されたスマホを見ると、確かに煌から“遅くなる”というメールが来ていた。
「帰って来るの何時になるか分かんねぇから送る」
「……うん」
──皆、大丈夫なの?
そう聞こうと思ったけど聞けなかった。
だって、頭を撫でる手が“大丈夫だ”と言っているような気がしたから。
「じゃあ帰ろっか!あ、帰り寄りたい所あるから寄ってくれる?」
足元にあった鞄を手に持ち、先に歩き出す。
「………」
「………」
さっきまであんなにうるさかったのに、今は反対に静かな二人。
だけど、階段に近付くとどちらからともなく手を繋いで、そのままバイクがある所まで歩いていく。
それが何だかくすぐったくて嬉しかった。
だけど、それも進むにつれて消えていき、代わりに込み上げてくる言い様のない寂しさ。
──今日で最後なんだ。
そう思うと寂しくて。
この数ヶ月間の出来事が走馬灯の様に脳裏を駆け巡っていった。
初めは獅鷹以外のチームと関わるなんて絶対に嫌だと思ってた。
だけど、いざ関わってみたら楽しくて。
いつの間にか鳳皇はあたしにとって大切な居場所になっていた。
でも、此処に帰って来るのは今日で最後。
明日からはもう此処はあたしの居場所じゃない。
「──ホラ、メット被れ」
こうしてバイクに乗せて貰う事ももう無くなるんだ。
そう思うと、涙が出そうになった。