Ri.Night Ⅱ
「──オイ。何でそんなに上なんだよ」
倉庫から出て一つ目の信号で止まった時、十夜が肩越しに振り返ってそう聞いてきた。
「……あっ、ごめん」
「馬鹿か。急に離すんじゃねぇよ。落ちんだろうが」
慌てて巻きつけていた腕を離すと、直ぐにまた引っ張られ、再び腹部に巻き付けられる。
「ちゃんと掴まってろ。っていうか何処行くんだよ」
「……繁華街」
そう返事した時、ちょうど信号が青に変わってバイクが発進した。
“オイ。何でそんなに上なんだよ”
無意識だった。
無意識の内に“それ”を避けていた。
──十夜の腹部にある“傷”を。
見たのは一瞬だけだったのに、何でこんなにも鮮明に思い出せるのだろう。
色濃く残った残像が、目に焼きついて離れてくれない。