Ri.Night Ⅱ
紡いだ言葉は直ぐに雑踏の中へと消えていった。
けど、十夜には届いたと思う。
だって、あたしを見据える瞳が少しだけ揺らいだから。
ただただ真っ直ぐにあたしの目を見つめる十夜。
「十夜──」
「それだけか?」
「…………え?」
返ってきた言葉は全く想像していなかった言葉で、逆にあたしが困惑した。
……どういう意味?
十夜の言ってる意味が分からない。
それだけって何?
「買い物すんだろ。行くぞ」
「ちょ、」
ちょっと待ってよ!
もしかしてこれって冗談だと思われてるの?
違うのに。
あたしは本気で──
「十夜!冗談じゃなくてホン──」
「駄目だ」
「………っ」
──たった、
たった三文字の言葉で遮られた。
何も……言い返せない。
言い返す事が出来ない。
だって、十夜の鋭い視線も、身に纏うオーラも、
何もかもが“それ以上言うな”って拒絶しているから。
けど、あたしは退かない。
ううん、退けない。
だってあたしはこの決断を下すまで沢山悩んで、悩んで悩んで悩みまくって沢山泣いたんだから。
あたしだって離れたくない。
“鳳皇を抜ける”だなんて言いたくないよ。
でも、それ以上に貴兄の事をバレたくないの。
嫌われたくない。
自分勝手だって分かってる。
分かってるけど、でも、“バレて”嫌われるよりずっといい。
だから、許して。
離れるのを許して。
泣きたい気持ちを心の底へ閉じ込めて、あたしは十夜を真っ直ぐ見据えた。
「あたしは本気。十夜に何を言われても絶対抜けるから」