Ri.Night Ⅱ
「……理由は?」
理由。
今度はちゃんと言わないといけない。
どんなに辛くても、どんなに悲しくても、
これは、自分が決めたことなんだから。
十夜に謝らずに逃げるんだ。
これぐらい耐えなきゃいけない。
十分過ぎる沈黙の後、あたしは“離れる理由”を告げようと口を開いた。
「あたし、海───」
「アイツか?」
「………え?」
“海外に行く”と言おうとした時、またもや十夜に遮られて。
十夜の口から出た言葉に眉が引き寄った。
アイツって、誰の事……?
“理由”を伝えるよりも十夜の言った言葉の方が気になって、続きが出てこない。
「……アイツって?」
「勉強した日の朝、一緒に居た男」
勉強した日の朝に一緒に居た男?
頭の中で思い出そうとするけど、全く思い出せない。
「暴走があるって言った日の朝、バイクで迎えに行った時。そん時マンションの前で一緒に居た奴」
「……っ」
それってまさか……。
誰の事を言っているのかやっと分かったあたしは、思わず一歩後ずさった。
……もしかして、あの時十夜に見られてたの?
貴兄と一緒に居る所を。