Ri.Night Ⅱ
「……抜ける理由にあの人は関係ない。あたしが抜けたいと思ったから抜けるの」
痛む心を抑えながら、十夜の目を真っ直ぐ見つめてそう言う。
だけど……。
「駄目だ」
「なんで!?」
「駄目だ」
「だから……」
「ぜってぇ許さねぇ」
鋭さが増した双眸に何も言えなくなる。
煌の言ってた通りだ。
十夜は認めてくれない。
でも──
「何を言われても抜けるから」
あたしは、抜けなきゃいけないの。
バイクを挟んで睨み合うあたし達。
もう、周囲のざわめきなんて聞こえなくて。
「諦めろ」
十夜の声だけが鮮明に響いた。
……なんで、
なんで抜けさせてくれないの?
抜けさせてくれないとあたし……。
「やだっ!」
「許さねぇって言ってんだろ!!」
「……っ許してくれないならそれでもいい!勝手に抜けるから!」
初めて聞く十夜の怒鳴り声に一瞬怯んだけど、自分の意思を貫き通した。
言うだけ言ってその場から駆け出す。
「凛音!!」
背後から十夜の叫び声が聞えたけど止まらない。
振り返る事もしない。
振り返ったら駄目。
そう自分に言い聞かせて、行き交う人混みの中に紛れ込んだ。