Ri.Night Ⅱ
26.二つの敵
繁華街の脇道を抜け、メイン通りに入る。
家がどっちの方向だとかは一切考えず、ただがむしゃらに突っ走った。
「……っはぁ……っ」
どれぐらい走っただろうか。
全速力で走ったあたしは息も絶え絶えになっていて。
走る速度を緩めて、人の波に身を任せた。
歩きながら空気を吸い込めるだけ吸い込み、大きく深呼吸をする。
「ふぅ……」
頬を撫でる夜風のお陰で、少しずつ冷静さが戻っていく。
………あ。
人混みをすり抜けながら注意深く周囲を観察していると、視界にあるものが飛び込んできた。
イラッ〇マ……。
それを見た瞬間、足が勝手にその方向へと歩き出した。
ゲーセンの前に立ち、二階の手すりからぶら下がってるイラッ〇マを見上げる。
それを見てると、何だか無性に二階へ行きたくなってきて。
気付けばエスカレーターに足を掛けていた。
エスカレーターから降りて、トボトボと目的の場所へと歩き出す。
此処……。
目の前にあったのは中田と会ったお手洗い。
それを見た瞬間、此処であった出来事を思い出した。
中田に無理矢理つけられたキスマークに身震いして、十夜の唇の感触に頬が火照る。
言い表せないほど複雑な感情が胸中で入り乱れて。
「……っ」
もう感情の制御が出来なかった。
「……ぅっ」
口から洩れるのは、小さな嗚咽。