Ri.Night Ⅱ
煌に腕を離すよう促すけれど無反応で。
どれだけもがいても離してくれない。
「煌!」
「………」
「煌くん!」
「………」
「煌さん!」
「………」
「煌様!」
「う~ん。それ良いねぇ」
良くないし!!
「早く……って、ぅわっ!」
文句を言う前に思いっきり背中を押され、前のめりに倒れていく身体。
「ったぁ……」
気付いた時には顔面を強打していて。
あまりの痛さに顔を押さえて悶絶した。
……い、痛すぎる。
何なのよもう……。
「……っ、って、何!?」
体勢を立て直したか思えば突然右腕を掴まれて、取り敢えず訳が分からないまま顔を上げる。
すると、目が合ったのは会いたくないと思っていた十夜で。
「……っ、とお……」
「十夜!」
不意に投げ掛けられたその声に振り向けば、チャリンという音と共にクマさんのキーホルダーが宙を舞った。
それは真っ直ぐに十夜の元へと飛んでいき、手の中に吸い込まれていく。
十夜はそれを掴むや否や、無言であたしの腕を引っ張った。
「ちょっ、十夜!離して!どこ行くの!?あたし行かない!!」
必死に止めようとするけど止まってくれなくて。
「煌!雷さん!助けて!」
直ぐに煌と雷さんに助けを求めたけど、二人は爽やかな笑みを浮かべながら手を振っていた。
そ、そんな殺生な……。