Ri.Night Ⅱ







「十夜、痛い。離して。ねぇ、十夜!」



パーキングから出た十夜はずっとこんな感じで、目も合わさないし会話もない。


ただひたすらあたしの腕を引っ張って歩くだけ。


手を振り払おうにもガッチリ掴まれているからどうにも出来ないし、もう大人しく着いて行くしか道は無かった。






会話がないまま歩いていると、見知ったお店がチラホラと姿を現し始めた。



もしかして十夜が向かってるのって……。



此処に来てようやく気付いた目的地。


見えてきた“Tear Drop”の看板にホッと安堵の溜め息が零れ落ちて、それならそうと言ってよ、と心の中で十夜を責めた。






お店の前に着くと、十夜は雷さんから受け取ったキーホルダーを鍵穴に差し込んだ。


どうやらあのクマさんのキーホルダーはお店の鍵だったらしい。


クマのキーホルダーを付けるんならイラッ〇マつけたらいいのにね。


今度お気に入りの一個持って来よう。




そんな事を思っている間にお店の中へと引き摺り込まれ、カウンターの奥へと連れて行かれる。



ちょ、此処入っていいの!?



調理場を突き進み、一番奥にあるドアを躊躇いもなく開ける十夜は遠慮というものを知らないらしい。


入ってすぐ靴を脱ぎ出す十夜にあたしも慌てて靴を脱ぐ。



「ひゃっ!」



カーペットへ上がったかと思うと、掴まれていた腕を思いっきり引っ張られ、勢いのあまり前へと倒れてしまった。


覆い被さるようにして倒れたあたしを座り込んだ十夜が抱き止めてくれる。




「とお──」


「逃げんじゃねぇよ」



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