Ri.Night Ⅱ
「………っ」
耳元で囁かれたその言葉にビクッと震える身体。
低い声色に少しだけ萎縮して、キュッと目を閉じる。
やっぱり……怒ってるよね?
そうだよね。
逃げた挙げ句、見つけたと思ったら敵に囲まれるんだから。
怒って当然だ。
「お前、馬鹿だろ」
「………」
ごもっとも過ぎて何も言い返せない。
「──馬鹿が。心配させんじゃねぇよ」
「……っ」
一変した声色と、小さな溜め息。
肩に回されていた腕が腰へと移動して、グッと引き寄せられる。
「十、夜……?」
密着した身体に声が震えて。
「言いたい事言って逃げんな」
「……っ、ごめ、」
優しく咎める十夜に涙が浮かぶ。
「抜けんな」
「………え?」
「抜けんじゃねぇよ」
「………」
何を、なんて聞かなくても分かる。
十夜、迷惑ばかりかけてるあたしを引き止めてくれるの……?