Ri.Night Ⅱ


「………っ」



耳元で囁かれたその言葉にビクッと震える身体。


低い声色に少しだけ萎縮して、キュッと目を閉じる。



やっぱり……怒ってるよね?



そうだよね。


逃げた挙げ句、見つけたと思ったら敵に囲まれるんだから。


怒って当然だ。





「お前、馬鹿だろ」


「………」



ごもっとも過ぎて何も言い返せない。






「──馬鹿が。心配させんじゃねぇよ」


「……っ」



一変した声色と、小さな溜め息。


肩に回されていた腕が腰へと移動して、グッと引き寄せられる。



「十、夜……?」



密着した身体に声が震えて。



「言いたい事言って逃げんな」


「……っ、ごめ、」



優しく咎める十夜に涙が浮かぶ。









「抜けんな」


「………え?」


「抜けんじゃねぇよ」


「………」



何を、なんて聞かなくても分かる。



十夜、迷惑ばかりかけてるあたしを引き止めてくれるの……?

< 60 / 348 >

この作品をシェア

pagetop