Ri.Night Ⅱ
……出た。悪魔煌。
折角幸せな気分に浸ってたのに、一気に堕としてくれたよね。
憎まれ口を叩きながら雷さんと一緒に部屋へと上がってくるその姿は、悪魔を通り越して最早魔王にしか見えない。
……って、そう言えば。
「煌、千暁くんは!?」
傷だらけになった千暁くんを思い出して、腰を下ろしたばかりの煌に詰め寄っていく。
「病院に連れてった。まぁ、検査の為一晩入院だな。大丈夫だ。そんなに酷くねぇ」
「……そっか。良かった」
本当ならあたしが病院に連れて行かなきゃいけないのに。
ごめん、千暁くん。ごめんね。
明日、謝りに行こう。
「それにしても疲れたわー」
……うっ。
煌から向けられる視線が痛い……。
「……ごめん」
「まぁ、お前が居るって言うなら許してやらねぇこともねぇけど」
ニヤリと口角を上げる煌に何の返答も出来ない。
スッと細められた瞳に、
“お前が抜けねぇなら許してやるよ”
そう言われている様な気がしたから。
「何の話しだよ?」
彼方が不思議そうに煌に聞くけど、煌は「何もねぇよ。そういやお前らの方はどうなったんだ?」と言ってはぐらかした。
煌は二人に今回の騒動の原因を言うつもりは無いらしい。
あたしが攫われた事になっているのがその証拠だ。
……って、あっ!!
「彼方!!」
もう一つ重要な事を思い出して、目の前にいる彼方の顔を両手でガシッと乱暴に掴んだ。
「な、何だよりっちゃん!」
「怪我!彼方、怪我したんじゃないの!?」
「は!?え、ちょ、りっちゃん!?」
ガッシリ掴んだ彼方の顔を上下左右に振り回す。
けど、かすり傷一つ見当たらない。