Ri.Night Ⅱ
「十夜」
腰に巻き付いている十夜の右手にそっと手を重ねて、握り締める。
「──凛音ちゃん、先行ってるね」
「……うん」
何かを感じ取ったのか、あたしの腕を離して部屋を出て行く壱さん。
皆が出て行ったのを見届けると、あたしはもう一度十夜の手をギュッと握り締めた。
「十夜、帰ろう。明日、朝早いんだから」
「……」
「十夜が寝坊したらあたしも遅刻するんだからね?道連れは嫌だよ」
そう言えば、腰に回された腕がピクッと揺れ動いた。
……あたしが言った言葉の意味、分かった?
「……あぁ」
良かった。伝わったみたいだ。
「じゃあ、早く帰ろう」
そう言って動けば、今度はすんなり離してくれた。
同時に立ち上がり、部屋を出る。
「おっせーよ、凛音」
「ごめんごめん!」
外に出るなり陽にぶーぶー不満を漏らされて、すぐに機嫌を取りにいく。
「凛音ちゃんまたお店に遊びに来てね」
「うん。雷さん、今日はありがとう」
バイクに跨がった雷さんに深々と頭を下げてお見送り。
お店が定休日だった雷さんは、近くにある友達の居酒屋で食事をしていたらしく、十夜からあたしがいなくなったと連絡が来て、慌てて捜しに出てきてくれたらしい。
友達と食事してたとのに本当に申し訳ない。
雷さん、ごめんね。ありがとう。