Ri.Night Ⅱ
「お邪魔します……」
「どうぞー。凛音、そこに座ってね」
通されたのはリビングの端にある大きな鏡の前で。
どうやら此処で準備をするらしい。
「さて、色々お話したいところだけど時間ないし、取り敢えず準備始めましょうか」
愛歌さんはそう言うと、リビングのテーブルの上に置いてあった大きなボックスを持ってきた。
え、待って。どういうこと!?
「ふふ、驚いた?愛歌はね、メイクアップアーティストなのよ。今日、凛音が此処で浴衣着るって言ったら『あたしが着せたい!』って言ったから呼んだの。内緒にしててごめんね?」
「え、愛歌さんメイクアップアーティストなんですか!?すごーい!そんな凄い人にして貰えるなんて嬉しい!真紀さん、愛歌さんありがとう!」
まさかの新事実に手を叩いてはしゃぐあたし。
メイクアップアーティストとか、そんな凄い人にやって貰えるなんて夢みたい!嬉しすぎる!
ハイテンションのあたしに苦笑する真紀さん。
一方、愛歌さんはと言うと、胸の前で両手を握り、目をキラキラさせていた。
あ、なんか嫌な予感がする……。
「いやーん!凛音ちゃんなんて可愛いのっ!!もうお姉さんが可愛くしてあげちゃう!!」
やっぱり!
二回目のハグにまたもや窒息しそうになり、真紀さんに向けて早々に白旗を挙げる。
「あ、愛歌、ハグはいいから早くしてあげて」
真紀さんのその言葉に「そうだったわ!さぁーてやるわよー!」とあたしを離して気合いを入れる愛歌さん。
た、助かった……。
ゼーハーと息を乱しているあたしを余所に、キラキラオーラを纏った愛歌さんは着々と準備を進めている。