Ri.Night Ⅱ
「凛音、この浴衣が今年の凛咲からのプレゼントよ」
そう言って真紀さんが持ってきてくれた浴衣は、濃い紫色の生地に紅薔薇色の上品な花が描かれていた。
「うわぁ、綺麗……」
ウットリと呟いたあたしに、ニッコリと微笑む真紀さん。
「『凛音も高校生になったから綺麗な浴衣で男の子を誘惑してね!』って凛咲が言ってたわよ」
「……プッ。凛咲らしいわね」
「ママ、誘惑って……」
いかにもママが言いそうなその言葉に愛歌さんと二人で噴き出す。
ママ、ありがとう。
誘惑は出来ないけど凄く嬉しい。
「さ、着付けしよっか」
必要な物を並べて、まずは浴衣用肌着を着用。
きっちりと補整をして、その上に浴衣を羽織る。
何度着ても良いなぁ。浴衣って。
鏡に映る自分の姿に、ふふっと笑みが零れる。
早くお祭りに行きたい!
「はーい、完成!いやーん!流石あたし!凛音ちゃん可愛いー!」
「見て見て!」とあたしを全身鏡の前に立たせる愛歌さんはまるで自分が着物を着たかのように喜んでいる。
っていうか、凄い……。
もう原型留めてないんですけど。
変わり果てた自分の姿に呆然とするあたし。
なんか、これ見ちゃうと普段やってる自分の変装が子供騙しみたいに思えるよね。
「愛歌さん、ホント凄すぎ……。自分じゃないみたいみたいだよ。元の顔は置いといて、ヘアとメイクが凄すぎて別人みたい」
「なーに言ってんの!元が良いからこれだけヘアとメイクが引き立つのよ!凛音ちゃんは可愛いんだから自信持って!」
ね?と鏡越しに親指を立てる愛歌さんにエヘヘと照れ笑い。