隣の席のみなみくんは笑わない
「あ、南。」
───バビュンッ!
南、という単語を出しただけで、華は光の速さ顔負けのスピードで教室を去って行った。
後に残されたのは、彼女のスクールバッグだけ。
……あの子、確か50m10秒だったわよね……。
「……………………。」
呆れたと言うか、関心というか。開いた口が塞がらないとはまさにこの事。
華が去った後の静かな廊下を振り返る。
そこにはもう華の姿は跡形もなかった。
愛のチカラは人の身体能力を極限まで引き出すらしい。
窓の外で鳴くすずめの声が妙に心の声とシンクロした。