シンデレラタイム
「光里ちゃん。何がダメなの?」
…アンタの裏の顔がダメなんだよ。その笑顔の裏にある本当のアンタがダメなんだよ。
「千花を貸してくれない?」
なにそれ。
一つため息をついた千花ちゃんが、眉を下げてあたしに言う。
「光里。もういいでしょ?」
「お姉ちゃんが心配なんだよね。大丈夫。千花とはちゃんと向き合ってるんだよ?わかる?」
わからない。
わからないよ。
さっきみたいに、わざわざあたしの顔の位置まで屈んだ雄弥に猛烈に腹が立った。
「……馬鹿な女。」
一言。
雄弥の口から出たその言葉をあたしは聞き逃さない。
……今なんて言ったの?
目の前で満面の笑みを浮かべられて、あたしは何も言えなかった。
この人には届かない。
届かないんだ。
………だったら。
ドスッ!!!
「あんた、可哀想。」
雄弥の左頬を殴ってから、それだけ言った。
今あたしができる、精一杯の反撃だった。