シンデレラタイム


ぼーっとして、昔の記憶が蘇る。




暗い暗い、海の底のような。
もしくは果てしない宇宙のような。



でも、そんな綺麗なものじゃなくて、濃い藍色で目の前が塗り潰される。






…タツヤかぁ。




自己紹介をされた時、真島の友達なのに、咄嗟に浮かんだのはパパの後ろ姿。




羽原 辰弥(うばら たつや)だっけ。




しつこくパパの名前を覚えてる自分が心底嫌い。



まさかこんなところでパパと同じ名前が出てくるとは思ってなくて、嫌でも思い出す。



昔のこと。




海だってそう。


一回だけパパと来たよね。




…なんて、考えるのはやめよう。


今は臨海学校なんだし!


海も遊べば楽しい場所になる。それに楽しい思い出が詰まった所って、あたしの中で思えるようになりたい。



フッと笑って、みんなの元へ行こうとした。



なのに。


目の前に広がるこの景色が、どうしてもあの時と重なって。




足に当たる波が、あの時と同じ感触で。


この潮の匂いが、余計に記憶を蘇らせて。



…千花ちゃんが泣いてる。


…柊大が嫌がってる。



「…千花ちゃん。柊大。」



涙が滲む弱い自分。

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