シンデレラタイム
「見て!綺麗だね~!」
そう言って指差す先の景色に息を飲んだ。
葵の笑顔が金色に光る。
赤とオレンジと黄色と。
グラデーションが施されたかのような空。
大っきな太陽がすぐそこにあって。
光が海に反射して一面広がる暖色に、何だか温かさを感じる。
洗練された空気の中、静かに沈む太陽が一日の終わりを告げるのが神秘的で。
ただ綺麗だと思った。
葵の方に歩み寄って、隣に立った。2つの影が並ぶ。
「先生怒るかな?」
「怒るでしょ~。遅刻だもん。」
「けど、葵と夕焼け見れて良かったよ。」
「うん。あたしも。ねぇ、光里。」
「ん?」
「また来よ。」
名残惜しさを残して、その場を去る。さっきみたいに走らないで。ゆっくり、でもちゃんと確実に。
おじさんと住み始めて間もない頃、千花ちゃんと柊大とあたしを元気付けるために、車で1時間かけて綺麗な夕日を見せに連れて行ってくれたあの日を思い出す。
忘れていた景色。重なった景色。おじさんが見せてくれた景色。
心に残る景色を、今度は葵と見れた。
それがなんだか嬉しかった。
足早にホテルに戻る。
普通に見つかって先生にこっぴどく叱られたけどね。