麗雪神話~青銀の王国~
(婚約者………)

単語の意味を理解すると、どうしようもないもやもやとした気持ちが沸き起こってくると同時に、胸にすとんと落ちるものがあるのも事実だった。

シルフェの並外れた美しさは、確かにディセルたちに通ずるものがあるのだ。そしてヴェインが襲って来たとき、強い風が霧を流してくれた。あれはあの場に居合わせたシルフェの力だったと考えれば、納得できる。

(じゃあ…シルフェが捜しているって言っていた好きな人って……)

間違いなく、ディセルだ。

鈍器で殴られたような衝撃を感じる自分が、不思議でならなかった。

神様の婚約者は、それはもちろん、神様だろう。

何をそんなに衝撃を受けることがある?

(じゃあ、天上界に戻ったら、ディセルはシルフェと……)

似合いの二人ではないか。

なぜ、素直に祝福する気持ちが、わいてこないのだろう。

わからない……。

黙りこくってしまったセレイアの頭に、レインスがぽん、と手を置いた。

「ま、教えたかったのはそれだけ。あとは勝手にどうぞ?」

そう言うなり彼は忽然と姿を消してしまった。

残されたセレイアは、呆然と、しばらく身じろぎひとつできなかった。
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