麗雪神話~青銀の王国~
セレイアはため息をつきながら、無意識に空中庭園へと向かう。

そこに彼が来てくれるかもしれないからだ。見たら胸が痛いのに、それでも気が付くと視線は彼をさがしている。

空中庭園の中、美しい大振りで真っ赤な花の前に、ディセルがいるのをみつけた。

(ディセル)

今日こそはお守りを渡して、謝ろう。

そう思った時、ディセルの影で見えなかった、彼の同伴者をみつけてしまった。

シルフェだ。

シルフェが満面の笑みでディセルに何か語りかけ、ディセルもそれに微笑んで答えている。

親密そうに見えた。

セレイアはそれだけで、もうだめだった。

それ以上見ていられなくて、ディセルがこちらに気付く前に、足早に逃げ出してしまった。

(私、どうしちゃったのかな)

わからなくて、泣きたくなってくる。

必ず助け出すと言ってくれたディセルと、シルフェと一緒にいる今のディセルを、同一人物と思えない自分がいる。

「なんだか顔色が冴えないな、セレイア」

不意に話しかけられ、セレイアは驚いて顔を上げた。

思わず周囲を確認する。

与えられた部屋の中だ。

つまり、……

自室に堂々とセレスが入ってきていることを理解して、セレイアは眉をつりあげる。

「ちょっとセレス。女の子の部屋に勝手に入ってこないで」
< 112 / 172 >

この作品をシェア

pagetop