麗雪神話~青銀の王国~
セレイアはセレスの持って来た果実酒を、少し口につけた。

セレスはしばらく呆然としていたが、我に返ってつぶやいた。

「…はじめて、私に笑ってくれた…」

「え? 何か言った?」

「いや……セレイア」

セレスは食事を手近なところに置くと、セレイアの前で跪き、彼女の手を取った。

「一曲、私と踊っていただけませんか」

ダンスの誘いを、先ほどからことわりまくっていることなど、知っているだろうに。

どうして彼はこんなにまっすぐに、人を想えるのだろう。

その想いが、今のセレイアには沁みた。

「いいわ、一曲だけね」

その返事に、セレスは驚いたようだった。

「…本当に?」

信じられないとでも言いたげな様子に、セレイアはまた笑ってしまう。

自分ときたら、どんなふうに見えていたのだろう。

ダンスなどしない、料理も食べない、カタブツ少女?

その想像に、また笑みがこぼれた。

セレイアはセレスに手を取られ、広間の中央へと出た。

ちょうど曲が変わるところだった。

「踊れるか? スローテンポだから、私のリードに任せていれば大丈夫だが」

「大丈夫よ」
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