麗雪神話~青銀の王国~
第七章 神に選ばれし娘

ラピストリ最終試練。

それはサティエイト王国の、夏の風物詩、夏至祭の最終日に行われることになっていた。

日に日に暑さを増し、緑の色が濃くなる季節だ。

色とりどりのバラの花が、王宮でも、街でも、あちこちの庭先で咲き乱れる。

南からくる生暖かい風が、さわさわと花や緑を揺らして、どこまでも駆けていく。

それらを人々は喜び、歌い、踊り、今日の日の命を感謝し合うのだという。

今年の祭りは特に、ラピストリ最終試練が目玉として執り行われるから、人々の浮かれ方はすごいものだった。

道端に屋台が出て、あちこちで旅芸人たちの音楽が奏でられる。

人々は皆笑い合い、はしゃぐ。

そうして迎えた祭りの最終日、人々はクイーンズパレスの裾にある、城下町の円形巨大広場に押し掛けた。

そこで、次代の女王が決まるのだ。

今回の候補者は三名。

どの娘も美しく賢いとのうわさだ。

「あたしはレティシア様じゃないかと思うけどねぇ」

「美しさではシルフェ様にかなわないよ。私はシルフェ様だと思う」

「セレイア様はなんでもあの美しさで、武芸の達人だと聞いたよ。彼女がふさわしいんじゃないかな」

人々はそれぞれにひいきの候補の名前を挙げ、円形に広がる観覧席から、今か今かと試練が始まるのを待っていた。
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