麗雪神話~青銀の王国~
空からディセルへと体の向きを変え、満面の笑顔をくれる。

「叶えればいいわ、その夢!」

「ああ……叶えられたら、な」

そうなればどんなに素敵だろうと本気で思う。

しかしディセルの返事に含まれる切なさに、セレイアはすぐに気が付いたようだ。

急に表情を曇らせる。

「あ………でもディセルはいつか、天上界に、帰る、のよね…」

「……うん」

そのために旅をしていることを忘れられるはずがない。

ディセルは視線を空に向ける。

天上界があるであろう方角へ。

帰らねばならない。

わかっている。きっとそれが自分の宿命だと。けれど――





切なげな視線を空に向けるディセルを見ていると、こみあげる想いがあってセレイアは自分に驚いていた。

思わず行かないで、と言いそうになった。

―行かないで、ずっと、人間界にいてと。

(何をばかなことを考えているの。ディセルは神様。私たち人間とは違うのよ。天上界に戻るのは、当たり前じゃない)

それなのに、別れを思うとひどく胸が痛む。

でも…なぜ?

「セレイアの夢はなんなの」

ディセルが訊ね返してきたので、セレイアは胸の痛みから意識をはなすことができた。

「私の夢は、…………トリステアのみんなの幸せよ」

「え……自分の幸せは?」

「私は……――」

セレイアの胸に、笑うヴァルクスの姿が蘇る。

吐息と共に、言葉がこぼれた。

「私はもう、幸せにはなれないから」

それは宣誓にも似ていた。

自らを戒める鎖を意味していた。
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