麗雪神話~青銀の王国~
隣のディセルをふと見ると、セレイアよりも辛そうな顔をしていて驚いた。

「…ディセル?」

「そんなことない。俺、俺が……」

しかしディセルは何か言いかけて言いよどんだ。

この時ディセルが胸の内に嵐を抱えていたことなど、セレイアは知るよしもない。

―俺に何ができる? 人ですらない俺に。

幸せにしたい、確かな想いを、ディセルはセレイアに告げることができなかったのだ。

その時、頭上をたくさんの青プミールが駆けて行った。

整然と隊列を組み、美しい模様を描きながら広がったりまた一列に戻ったりするプミールたち。…騎乗者たちの見事な技を感じた。

彼らの青銀の鎧兜がまばゆく陽光を跳ね返している。

「…“青銀騎士団”だわ! すごい! 本物よ!」

セレイアは思わず身を起こし、その隊列に見入った。

“青銀騎士団”の異名を持つサティエイトの騎士団は、その強さと美しさによって世界中で有名だ。

騎士たちは、サティエイトでは戦いだけでなく政治にも直接関与し、特別な役割を担っており、その地位は高い。

本物を見る日など来ないと思っていたが、ここで実物を見られるとは。
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