麗雪神話~青銀の王国~
「ああ。それについては、俺も思い出したよ。
風の神は自由に性別を変えられるんだ」

「で、でも…ディセルの婚約者、なんでしょ?」

「…一応ね。でも見てわかるだろう? シルフェは、シルフェードは、ずっと前からサラマス一筋なんだよ」

「そ、…そうみたいね…」

セレイアはそれを聞いて、勘違いしていた自分が恥ずかしくなった。

と同時に、またしても思わせぶり吟遊詩人にしてやられたのではないかと気づく。

今度会ったらただじゃおかない、と何度目になるかわからない決意をした。

「婚約も、解消するつもりでいる。だって俺は…」

―俺は……?

ディセルにあまりにも真剣なまなざしでみつめられ、セレイアはドキッとした。

なにかとても大切なことを言われそうな気がした。

だから…

だからセレイアは逃げた。

「そうそう、ところで、ラピストリは晴れてレティシア王女殿下に決まったのよ。最終試練で見事、天の玉座まで行ったから。これで私も解放されるの。また一緒に旅ができるわ」

「…うん」

二人は久しぶりに、目を見合わせて笑い合った。

今は、何も壊したくない。

だから、この距離のままで………。
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