麗雪神話~青銀の王国~
「ラピストリ様。そのへんにしておかないと、セレイアを絞め殺してしまいますよ」

聞き慣れた声は、セレスのものだ。

セレスは苦笑を浮かべながら、ゆっくりとセレイアたちのそばまで歩いてきた。

「…セレス」

彼ともここでお別れだ。

出会いからして最悪だったが、彼がところどころ見せてくれた優しさを、セレイアは忘れていない。

今ならこう言える。

「セレス、いろいろありがとう。
世話になったわ」

微笑みかけると、セレスは泣きそうな表情をした。

そんな幼い子供のような表情は、初めて見る。いつも憎らしいくらいに面の皮があつかったのに。

「…本当に行ってしまうのか」

「ええ、私には旅をする、目的があるから」

不意に。

セレスがその場に跪いた。
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