麗雪神話~青銀の王国~
傍観していたディセル、サラマス、シルフェ、レティシアに、驚きの波が広がる。

「私は本気だ。
どうか…いつかでいい、この国に戻って、我が妻となってはくれないか」

手を差し出すその仕草は、この国で正式な求婚の仕草。

セレイアは驚いて息をのんだ。

そう、いつだって、セレスは本気だった。

セレイアはゆっくり目を閉じ、息を吸い込む。

彼に本気で返事をするために。

「あなたが本気なら、私も本気で応えなければならないわね。
……ごめんなさい、セレス。あなたの求婚は、受けられない。
私には、好きな人がいるから…」

その時浮かんだ顔が、ヴァルクスではなく、白銀の美しい人だったことに、セレイアは気が付かなかった。

一方、セレイアの返事にほっとする反面、ディセルの内心は荒れた。

(それって…やっぱりヴァルクス王子のことだよ、な……)

埋められない距離。

もどかしいこの距離。

どうすれば、縮められるのだろう。

あと五か月しか、時間がないのに……。

「さ、別れも済んだなら、とっとと行こうぜ!」

サラマスが明るく言った。

「わ~い! サラマスと旅だ~♪」

相変わらず男の子のままでいるシルフェが、サラマスの腕に抱きつく。

「行こう、セレイア」

ディセルの声。

セレイアはレティシアとセレスに背を向け、仲間たちのもとへと歩き出した。

これから、四人での旅が始まる。

おそらく最後の旅が。

そう、行く先に別れの予感を匂わせながら……

セレイアとディセルの新しい旅は、始まった。
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