麗雪神話~青銀の王国~
そこには、青空色の髪と瞳を持つ、凛々しい若者が立っていた。

見ず知らずの彼に痛いほど凝視されていることに気づき、セレイアは慌てた。

「あ、あの、ごめんなさい。とてもかわいかったから、つい…。
あなたのプミールだったのね?」

若者は何も言わずに、大きな歩幅でセレイアたちに近づいてくる。

若者の背後に違う青プミールが控えているのを見つけて、セレイアの頭に疑問符が飛んだ。

(あれ、じゃあこの銀の子は?)

近距離に迫ると、若者はとてもがっしりとした体をしており、それでいてすらりと背が高かった。

甘いマスクといい、女性を虜にしてやまないだろうことが想像できる。

「…見つけた、〈ラピストリ〉よ」

「―――は?」

セレイアが単語をひとつ拾えずに困惑していると、若者は突然極上の笑みを浮かべた。

そしてあっと思う間もなく、セレイアを横抱きに抱き上げてしまった。

「きゃっ! な、何す―――」

予想外すぎる出来事に、頭も体もついていかない。

武術には精通しているものの、今は何の構えもできていなかった。

セレイアはばたばたと暴れたが、若者の腕はびくともしない。

いつのまにか青銀のプミールは姿を消していた。

かわりに若者が連れていたプミールがすぐそばまで飛んできていた。

「ちょっと! 放して! 放してってば!!」

叫んだが、若者は意に介さず、セレイアを抱いたままプミールに騎乗しようとしている。

セレイアの体を恐怖が走り抜ける。

(―連れ去られる!?)

かみついてやろうとした時、呆れたような声が降ってきた。

「…危ないから少し、おとなしくしていてくれ」

誰が大人しくなどするものか!

「放して! この人さらい! 誰か! ………ディセル!」

セレイアは無意識にディセルの名を呼び、さらに全身で暴れようとしたが、次の瞬間首筋に鈍い衝撃を感じた。

全身を浮遊感と夏の夜風が包む中、セレイアの意識はそこでぷっつりと途絶えた。
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