麗雪神話~青銀の王国~
セレイアが振り返るのと、人影が大股で広間に足を踏み入れるのが、ほぼ同時だった。

入ってきた人影と、目が合う。

空色の長い髪をなびかせた、相当な美男。

彼が王女殿下の「伯父上」であるかどうかまではまだ思考がついていかない。

それよりもまず、この男、セレイアには見覚えがありすぎた。

「ああ! あなた! ようやく姿を現したわねっ! この人さらい!」

見間違えようもない。

その男は、セレイアをさらったあの男だった。

セレイアの剣幕にも、若者は動じた様子がなかった。

「御嬢さん、よかった、目を覚ましたんだな」

ふっと甘いマスクで微笑まれても、普通の令嬢ならいざ知らず、セレイアは動じない。

こちとらいい男はディセルとサラマスで見慣れているのだ。

「目を覚ましたも何も、あなたが気絶させたんでしょうが!」

毛を逆立てた猫のように、セレイアはかみつく。

「少々手荒な真似をして申し訳なかった。でも、あなたが大人しくしていないからだぞ?」

「大人しくするわけないでしょう!」

「元気がよくていいことだ」

愛しむように目を細められて、セレイアは混乱する。

―なに、こいつ…!
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