麗雪神話~青銀の王国~
こういう自然な表情が出せるくらい、この一週間でシルフェとはだいぶ打ち解けてきていた。それもそのはず、試練とやらはいまだ始まらず、女王候補たちは時間を持て余し気味で、ただ集まっておしゃべりする時間が多いのだ。

今日もこうして、パレスの広間の大きな窓から、空を眺めながら話している。

「だって、その前に青幻獣の背中に乗っちゃったんでしょう?
この国でそれは、たいへん名誉なことだわ。
すごいことなのよ」

“青幻獣”。

それが、セレイアが花畑で出会った青銀のプミールの名前らしい。

青幻獣は、女王に常に寄り添い力を貸す神の御使いとされ、聖なる王家に繁栄をもたらす守り神のようなものなのだという。

その生態は謎に満ちており、一人の女王の代に一頭しか現れない。そして代替わりの頃にどこからか、新しい子供の青幻獣がパレスを訪れるというのだ。

その青幻獣が選んだ娘が、新しい女王候補、ラピストリとなるのだという。

そう、サティエイトでは、基本女王位は世襲制ではないのだ。基本、とつけたのは、今まで世襲制と同じようにほぼ正確に、母から娘へと、女王位が受け継がれてきたからだ。

ならばいっそ世襲制としてレティシア王女に王位を授ければよいのに、などとセレイアは思ってしまうが、そうもいかない神聖なルールがあるのだという。

あくまでも、青幻獣に選ばれし娘でなければならないのだと。
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