麗雪神話~青銀の王国~
言葉にこめた熱意が伝わったのか、レティシアの様子がいつもと違った。

少し瞳を憂えるように伏せて、呟く。

「わたくし…友達などいませんわ。
この子だって、友達ではない。家族…に近いものはあると思うけれど」

少しでも内心を吐露してくれたことに、セレイアは驚く。

そして、少しでも気を許してくれたみたいで嬉しかった。

だからセレイアはレティシアに近づき、瞳をのぞきこんで言った。

「だったら、私と友達になりませんか?」

にっこりと、微笑んでみせる。

するとレティシアはきれいな瞳を見開いて、心底から驚いた様子だった。

セレイアはラピストリにはなれない。

なれないが、友達になるのに、理由はいらないはずだ。

「あなたと…私が?」

一人称が「私」になっているところを見ると、レティシアは相当驚いたようだ。

「はい。仲良くなれたらなあって、思って」

「な、そんな、なれるはずがないでしょう!
わたくしをばかにしているの?」

冷たい台詞だったが、そういうレティシアの頬は真っ赤に染まっていた。

―かわいい。

妹がいたら、こんな感じかも知れないとセレイアは思った。

そのあと、二人でプミールを撫でながら、ぽつぽつと会話をした。

レティシアは友達になるのを許してはくれなかったが、まるで友達同士のように、二人は話したのだった。
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