麗雪神話~青銀の王国~
シルフェの花を食べ終わり、青幻獣が近づいてくる。

じっと、青幻獣の目が、セレイアの持つつぶれた花に注がれる。

(そうよ、おいしくないわよ、つぶれてるんだから!
お願い、そのまま帰って…!)

セレイアは祈った。

心の底から祈った。

しかし……

その祈りは、通じなかった。

青幻獣はセレイアの持つつぶれた花に鼻面を寄せると、ぺろりと丁寧になめながら食べた。しかも、食べ終わった途端、セレイアにまで鼻面を寄せ、くいっと顎を動かして、セレイアを自分の背中に乗せようとする。

セレイアはどうにか踏ん張って背中に乗らないようにと試みたが、片足の重心をとられ、倒れ込むように青幻獣の背中に乗ることになってしまった。

周囲に驚愕の声が満ちた。

「おお、なんと…!」

「青幻獣が自ら背中に…!」

「すごい…!」

ふわふわの毛皮の感触に、セレイアは呆然となった。

(う、うそでしょ―――――!!)

試験官が、満足そうにうなずいて告げる。

「これにて、第三の試練は終了。
ラピストリ候補者はレティシア王女殿下、シルフェ殿、セレイア殿、以上の三名に絞られた。
選ばれし乙女たちは、心して最終試練にのぞむように」

セレイアの顔色は青を通り越して真っ白になった。

―三名。最終試練。

(ど、どうしよう――――!!)

こんなはずではなかったのに。

もっとやりようがあっただろうか。

後悔しても、後の祭りだった。
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