麗雪神話~青銀の王国~
巨大な輿は緻密な彫刻やリボンや花で飾られ、こんな時でもなければ一度は乗ってみたい立派なしろものだった。

レティシアとシルフェとセレイアの三人が、それぞれ赤、青、黄色と違う色のドレスをまとって輿に乗る。

沿道はこの時を待ち望んでいた国民たちであふれかえっていた。

(ディセル、どこ)

ゆっくりと、輿が動き出す。

セレイアと同じく着飾らされた青のシルフェは余裕の表情で、にこにこと笑顔を振りまきながら人々の歓呼の声に応えている。

(ディセル、私を見つけて)

それがどんなに儚い願いであるかわかっていても、願わずにはいられない。

セレイアはとても笑ってなどいられなかった。

心細くて、不安で、泣きそうだった。
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