麗雪神話~青銀の王国~
セレイアはベンチに浅く腰掛けて、ぼんやりと空を眺めているようだった。

その姿にはあのはつらつさがなく、ディセルにはとても痛々しく見えた。

ディセルは大声で名前を呼んで、セレイアに気づいてもらいたかった。助けに来ているんだと、気づいてもらいたかった。

けれどぐっとこらえる。

そしてポケットに忍ばせたメモを握り締めた。

もしセレイアと接触できたら、渡そうと思っていたメモだ。彼女を救い出す計画について書かれている。

うまく立ち回れば、今、彼女に渡せるかもしれない。

「とても素敵な庭ですね。
もう少し、奥まで見てみたいのですが」

にこにことほほ笑みながら、ディセルがさりげなくセレスに頼んでみる。

しかし、セレスはこう答えた。

「失礼、案内したいと思っていたのですが、どうやら大切な先客がいらっしゃるようなので、引き返しましょう」

「………」

なぜだろう。

間違ってもラピストリ候補とただの旅芸人が接触することのないよう、だろうか。

だとしたら、明日の芸の際にも、セレイアと接触するのは想像以上に難しいかもしれない。

「わかりました」

そう答えるしかなかったが、あまりにも名残惜しく、ディセルは踵を返してからも一度、セレイアを振り返った。

金色の長い髪が風にそよいでいる様に、その愛しさに、胸がきゅっと締め付けられる。

早く彼女と言葉を交わしたい。

彼女の方も、そう思ってくれているだろうかと、切なくなった。
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