麗雪神話~青銀の王国~
「セレス! ゴーグルと風車は!?」

「霧? 確かに珍しい霧だが、それがどうかしたのか?」

セレスののんきな声を聞いている限り、この国の人々はあまり霧を経験したことがないのだろう。

どうしよう、風を起こせれば――。

セレイアが頭をフル回転にして対応策を考え始めた時、不意に霧の中から何かが現れた。

黒い影―――人だ。

それも、顔の半分に銀色の冷たい仮面をした、少年の姿をしている。

セレイアの記憶の中で何かがかちりとはまった。

霧、霧を操る者、ディセルを襲ったヴェイン―――

―まさか、この霧は彼が…!?

「やあ、セレイアだっけ? ごきげんよう。
君を殺しに来たよ」

少年は喉のおくでくつくつと笑うと、長槍を構えてセレイアに向けた。

「……!! やっぱり、あなたがディセルを襲ったヴェインね!
私を殺しに来たって…どういうこと? なぜディセルではなく、私を!?」

「その方が面白いからさ。
奴の絶望を、見たくて見たくてね、くっくっくっ」

セレイアは飛び退ると、セレスの背中から長槍を失敬して隙なく身構えた。

対峙する二人を見て、セレスは唖然としている。
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