麗雪神話~青銀の王国~
空を旅すること数時間。

高地順応島の青プミール発着場にたどり着くなり三人の目に飛び込んできたのは、美しい街並みだった。

「うわぁ………」

そう言ったきり、セレイアは言葉をなくした。

それほどにその街は、美しかった。

整然と並ぶ華奢なつくりの建物の色はすべて鮮やかな空の青。それにところどころ銀の縁取りや装飾が施されている。賑わう通りは広く、地面の舗装もすべて銀でできている。

サティエイトが有数の銀の産出国であり、その街にも銀がふんだんに使われている、と知識では知っていたが、実際目にするとその美しさはため息ものだった。

まさに“青銀の王国”だ。

呆然と見とれているセレイアに、微笑みながら係員が一言添えて街へと送り出してくれた。

「高地順応島も十分美しいですが、本島はこの比じゃありませんよ。中でもクイーンズパレスがすごい。どうぞ、楽しんできてくださいね! 行ってらっしゃい!」

広い通りには街路樹が植えられ、街路樹脇の花壇には色とりどりの花が咲き誇っていた。

どれも丁寧に世話されていることがうかがえる。

少し汗ばむ、温かい空気に、花と緑の香り。

季節は夏を迎えようとしていた。

年中雪に閉ざされるトリステアで育ったセレイアにとっては、はじめての「夏」だった。
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